コラム

ドル安続くの?

杉田勝です。

今から3年7カ月前、トランプ大統領が就任して以来1年余りはドル安が進んできました。その後過去2年以上は一貫してドル高傾向が続いていましたが、今夏、急速に下げており、多くのトレーダーを混乱させています。だがドル急落は、今年の株式市場が予想外の回復を遂げる追い風となっている能性があるのではないかとWSJウォール・ストリート・ジャーナルが伝えています。8月3日のWSJです。「ドル安続くか、株・商品市場には追い風。複数の主要通貨に対するドルの強弱を表すインターコンチネンタル取引所(ICE)のドル指数は7月、過去10年近くで最悪の月となっており、最近は2年ぶりの低水準を記録した。中国やドイツなどの国々で成長が加速する一方、新型コロナウイルス感染者増が米国経済の回復に歯止めをかけるとの懸念が最近高まっており、3月後半に下げに転じたドルはさらに軟化している。

レイ・ダリオ氏やジェフリー・ガンドラック氏などの著名投資家は最近、米政府が金融システムに資金を大量注入しているため、次第に物価が上昇し、消費者の購買力が損なわれかねないと公言している。財政赤字が急増すると、投資家は自国通貨を手放す傾向にある。格付け会社フィッチ・レーティングスは7月31日、米国の債務格付け見通しを「安定的」から「ネガティブ」に引き下げた。」としています。

ただ、これは筆者の反論ですが、日銀はアベノミクス以来、バランスシートを拡大し続けていますが、7年間も目標の2%のインフレはおろか1%にも達していません。また上記のWSJの記事にある「財政赤字が急増すると、投資家は自国通貨を手放す傾向にある。」ということについては、筆者は果たしてそうかな?と思いますね。というのは、我が国こそ財政赤字が急増しているからです。対GDPで240%もの財政赤字を抱える日本政府はマーケットでは有名な話です。にもかかわらず、我々日本人は日本円を手放す傾向というようなことにはなっていないからです。ちなみにフィッチは7月29日に日本国債の格付けを「安定的」から「弱含み」に引き下げています。

なぜドル安が続くのでしょうか?上記の記事にある理由も含め7つの理由が見つかります。

① FRBの無制限介入でドルが下がるという連想。
② 米中対立から中国のデカップリングが進みドル安が続く。(米株価は外国勢の購買意欲も刺激するので上昇中。)
③ 信用格付け会社による米国のRating下げによってドルが売られるから 
④ 米国10年債利回りはすでに0.5%まで下がって来ているので、金利差によるドル買いのメリットはない。
⑤ ドルキャリートレードの加速。金利が低いのでドルを借り、それを売って途上国などの利回りの高い債権、株、通貨などに投資。
⑥ エリオット波動理論上の下降C波にいる。下げの波は2021年後半まで続きそうです。
⑦ 夏はもともとドル下げ/米国債買い(=長期金利下げ)のシーズン

①については、コロナ禍でドルがとんでもなくひっ迫状態にありました。ドルへの換金のために金や米国債の売りが加速して、金暴落と米国債利回りが急騰しましたが、FRBがドルを無制限に供給し始めてますので、ドルのひっ迫感が和らいできたために、近い将来コロナが落ち着いた段階ではドルのオーバーサプライとなるのが確実だからです。③他の格付け会社(S&P、ムーディーズ)も時間の問題で米国ソブリン債の格下げを決定すると思われます。④ドルと円の金利差がなくなってきているので、ドル円の買い意欲がそがれやすい。⑤のドルベースのキャリートレードも加速するでしょう。などいろいろ今後も現状から類推できますが、どれもこれもドルベアシナリオです。

ただし、落とし穴がないとは言い切れません。ドル高になるかもしれない一つのきっかけが11月の大統領選挙です。民主党のバイデン勝利は株価を引き下げる要因になると思いますが、その時はこれまでの巻き戻しが起こり、一気に株安ドル高になる可能性もあります。もっともそれは3か月も先のことです。

杉田 勝