コラム

世界一のヘッジファンドは負けても顧客は逃げない!

杉田勝です。

世界一のヘッジファンドといえば、レイ・ダリオが率いるブリッジウォーター・アソシエイツです。

世界一という意味は預かり総資産が世界最大ということですが、2018年現在で1,230億ドル(13兆1,600億円)です。
ちなみに世界2位はジェイムス・サイモンという幾何学者が率いるルネッサンス・テクノロジーズです。運用資産は84億ドル(約9兆円)で第3位はAQRキャピタル・マネージメントというヘッジファンドです。たくさんの博士号取得者の集団で運用資産は77億ドル(8兆2,400億円)です。いずれも2018年ベースの運用資産です。

今回の新型コロナウイルスによる株価の下げで3月と4月に、主力の取引戦略での大きな損失を受けて、運用資産が15%減少したそうです。通常、ヘッジファンドとしてはこの打撃は極めて大きいです。資金の償還を言ってくる顧客は相当数いると思うのが通常ですが、それは日本人の発想。外人さんはもっと気長です。

5月29日に発表された数字によるとブリッジウォーター・アソシエイツの総資産は2月末の1630億ドルから4月末には1380億ドルに減少したとのことですが、その減少は、クライアントの撤退ではなく、負けたので減ったということです。

2019年にブリッジウォーターの預かり資産は1,630億ドル(17兆4,400億円、32.5%増)にも増えていました。2018年に130億ドル(約1兆4200億円)もの利益を叩き出していたのですが、1年で10%強の利益を上げたわけです。10%と聞くと、小さく聞こえますが、元本1,000万円で100万円もうけるのとはわけが違います。元本が巨大になればなるほど利益率は落ちます。世界中低金利の世界で年率10%は素晴らしい成績なのです。運用元本がそこまで集まるのも長年の運用実績によるものですが、17兆円もあるわけですから選べる市場も限定的です。

話がずれますが、運用額という点ではヘッジファンドではありませんが、ソフトバンクの孫正義氏率いる10兆円ヴィジョンファンドも巨大です。半分はサウジアラビアのムハンマド皇太子の出資のようですが、彼には年率7%の利益を保証しているといわれますので、ブリッジウォーターのそういう条件がない中での17兆円は驚愕です。

ヘッジファンドは無制限に運用資産を増やし続けられるものではありません。投資する市場が限られてくるからです。
池の中のクジラになってはいけないとよく言われる故です。ブリッジウォーターにお金を払ってまで運用を任せたい投資家はたくさんいて、相当長いウエイティング・リストがあります。
ヘッジファンドに運用をお願いするときのコストには、2つのものがあります。管理手数料が1~2%、成功報酬は利益の15~20%と言われています。無名のヘッジファンドなら管理手数料は0%でしょう。ブリッジウォーターはおそらく2%-20%かと思われます。

ヘッジファンドが負ける場合は償還されるのは当然なのですが、ブリッジウォーターの場合は脱落はほとんどなし。
資産が減少したことで、ブリッジウォーターには新たにお金を受け取るキャパができたようです。その結果、ブリッジウォーターは、長い長い顧客のウエイティング・リストに載っている基金や会社、追加投資したい既存のクライアントからの資金を新たに受け入れているということのようです。

こんなヘッジファンドマネージャーになってみたいですね~!

杉田 勝