コラム

OPECプラスの減産合意の「真水」部分小さすぎ

杉田勝です。

4月9日にOPECプラスの緊急電話会合が行われて結局「日糧1000万バレルの減産」で合意した模様です。

ただ、日本政府の新型コロナ対策用の108兆円の事業規模経済対策と一緒で真水部分は少ないようです。

まず、1000万バレルの内訳ですが、サウジアラビアは1-3月の生産量977万バレルからではなく、増産した4月の1,130万バレルからの22%減産ということなので、OPECプラス全体では実質的には650万~750万バレルの減産にとどまっているとのこと。

当初2,000万バレルの協調減産で話し合いか?とのヘッドラインでNYMEXのWTI原油は、オープニングからバレル2ドル以上上げていましたが、このニュースが伝わると22ドル台まで急落しました。

今朝になってさらに悪いニュースが。この減産幅にメキシコ(OPEC非加盟)が合意しておらず、メキシコが合意することを条件に「日糧1000万バレルの減産」という条件付き合意のようです。

いずれにせよ、OPEC(プラス)の力もなくなりましたね~。
世界一の原油生産国である米国を巻き込まないことには有効な手立てはなさそうです。
ただ、自由主義国代表の米国がカルテルに参加するというわけにはいきませんね。

今、新型コロナの影響で世界的な需要減は日糧2,500~3,500万バレルともいわれており、現在世界中で行われている厳しい封鎖措置が北米と欧州、一部のアジア諸国で大幅に緩和されない限り、いかに余剰の生産分を備蓄に回しても、需給のバランスは取れそうもありません。
ゴールドマンの予測では400万バレルの追加減産必要とか。

その点では本日行われるG20のエネルギー相の電話会合が注目されます。
ここには米国もロシアもサウジもいます。

OPECは1960年の設立以来60年間、油価が高いときは生産量でだましあいが続くカルテルでしたが、価格が下がってくると、急に協調的になります。
ただ、OPECプラスとしてさらに参加国が増え、ますます協調が難しくなってきたことに加え、今回はこれほどまでの世界的需要減のせいで、まだ仲間割れしたままの状態のようです。

サウジ(とロシア)の当初計画の通り、こうなったら増産を続け、価格をさげ、米国のシェール企業を倒産に追い込むしか両国とOPECプラスが生き残る道はないかもしれないですね。

杉田 勝