コラム

銀は金より狙い目か

杉田勝です。

最近金が1トロイオンス当たり1,800ドルを突破してきて、2011年9月に付けた史上最高値である1923ドルを狙って上がってきています。それを超えるのは時間の問題でしょう。

金価格がなぜ上がるのかというと、FRBがドル紙幣を無制限に刷っている一方、金は造幣できないからです。金は穴を掘って探すしかないのです。そんな金の供給量にも問題があります。これまで人類が採掘してきた金の総量は18万トン、それはオリンピックプール4杯分弱に過ぎません。そして、現在の金の可採埋蔵量(掘れる見込みのある潜在量)は5万トンのみ。現在、年に3,000トン程掘っていますので、あとたった17年でもう枯渇してしまいます。金の供給量には限界が間近に迫ってきているということなのです。

金は有事の金と言われ、リスクオフの時に買われるのが通常でしたが、現在のように株価が上がっている時(=リスクオン時)に上昇しているのはこれまではあまりないことです。頃株価は上がっていますが、一方でコロナ感染者は拡大し続けています。それに米中関係が緊迫化を増しています。ということで、有事の金を買いたいのですが、通常の感覚でいうと、高値をつかみたくないので、下がってから購入と考えるのが一般投資家の思いでしょう。下げを待ちたいと思います。

さて、金がいつ下がってくるかは誰にもわかりませんが、実は短期的には金より良い貴金属が注目されています。銀です。銀は、チャートを見ると一目瞭然ですが、金と比べ過小評価されています。金の史上最高値は、金同様リーマンショック直後の2011年4月の1トロイオンス当たり49.82ドルでした。現在の価格は19.75ドルですからまだだいぶ開きがあります。銀は金のたった100分の一?!

銀の生産国は金とはまったく違い、2019年現在世界で最大の産出国はメキシコ、ペルー、中国の順です。消費量では中国、米国、インドの順番です。金は世界需要の50%以上が宝飾品として使われていますが、銀の宝飾品としての使い道は総需要のたった20%です。主たる使用目的は、銀の熱伝導の良さ、電気伝導の良さという特徴を使って産業用に使われます。半導体や携帯の配線などに用いられています。なので、重要な工業メタルでもあります。

銀については今から25年ほど前、筆者は個人的にすごい相場を目の当たりにしました。バークシャーハサウェイのウォーレン・バフェット氏が銀を大量に買い占めたことがありました。1996年に世界に出回っている銀の20%に及ぶ1億2900万オンス(約4000トン)銀を買い占めたのです。1個人が20%を買い占められるくらい小さなマーケットであったということでもあります。
さて、写真用フィルムには銀が使われているようなのですが、当時は丁度デジタル写真がはやり始めた頃のことでした。筆者の知人に当時大成功していた米国人のマーケットアナリストがいたのですが、銀が必要なフィルムの需要がこれから激減するとして、バフェット氏に対抗して銀をショートしまくっていたのです。そのアナリスト氏、自身の公演の度ごとに「バフェットと対抗して銀のショートを増やした。」と吹聴していました。

結果はすぐ出てしまいました。銀価格はバフェット氏の思惑通り上昇して、私の知人は損切を余儀なくされ、破産してしまいました。その後バフェット氏は10年近くその大量の銀を保有し続けていましたが、2006年に全部売り払っていました。バフェット氏曰く「早く売り過ぎてしまってあまり儲からなかった」と伝えられています。

さて、そんな銀ですが、銀の埋蔵量は、2018年時点でおよそ40万トンであるといわれています。一見、多いように見えますが、このまま採掘が続けられるといずれは枯渇してしまいます。 2018年時点では、埋蔵されている銀は、2040~2050年頃には枯渇してしまうと考えられているのです。その点では金と似たような運命ですね。金はあと17~8年で枯渇するといわれています。

さて、本題。歴史的に金銀レシオは(金と銀の価格差)は平均1:50近辺のようです。コロナ禍直後に、そのレシオは1:120くらいまで上がりました。金価格は上がりましたが、銀価格は上がらなかったからです。現在銀が底打ちしたように見えますので、少し上昇してきていて1:100くらいまで上がってきています。銀の需要は今後も増えると思われること、またFRBがペーパーマネーを無制限に刷っているので、金も、銀も長期的には上昇していく可能性が極めて高いと考えられます。ただ、これからは金銀レシオが1:50くらいまで上がると仮定すれば、銀の値上がり幅は金より大きいのではないかと考えられるのです。

杉田 勝