コラム

もう香港に遊びに行けない

杉田勝です。

7月1日に香港の「1国2制度」を事実上なくす国家安全維持法が成立しました。
それを受けて米国は対中国の制裁法案を14日に成立させました。

7月15日のBBCは次のように伝えています。「ドナルド・トランプ米大統領は14日、香港に対する優遇措置を廃止する大統領令に署名した。中国が香港国家安全維持法(国安法)を成立させたことを受け、トランプ政権は中国への強硬姿勢を強めている。トランプ氏はホワイトハウスの記者会見で、「香港は今後、中国大陸と同様に扱われる」と述べた。「特別な恩恵も、特別な経済的待遇も、注意が必要な技術の輸出もなくなる」トランプ氏はまた、香港市民の権利を弾圧する中国当局者には制裁を科せる、香港自治法にも署名した。」と伝えています。

この署名によって米国の対中国政策の何が変わるのでしょうか?

(1)米中の通商協議で中国からの輸入品に対して課されていた追加関税については、実質的には香港経由で関税を逃れてきた中国からの輸出業者がこれからはその恩恵を得られなくなる。
(2)香港安全法に関わった中国の当局者への制裁として、彼らとその家族に対し米国への入国禁止、すでに入国している場合は国外退去、米国に持つ資産の凍結。この「当局者」には、デモ隊を罰した警察部隊や、香港の自治を侵害する行動に関与した金融機関などが含まれる
(3)犯罪人引き渡し条約の破棄

等々とのことです。

国家安全維持法は部外者にも大変厳しい内容が含まれているようです。特に38条では中国の政治的な転覆を企てる者、中国に批判的な者はたとえ外国に住んでいる中国人でなくても域外適用され、犯罪人となるという規定もあり、常軌を逸した内容になっていることが問題視されています。ということから、結果的に自国民を中国政府に引き渡すような結果につながる可能性もありうるため、すでにカナダやニュージーランドは、中国と締結していた犯罪人引き渡し条約の破棄を申し出ています。ちなみに、日本は中国と犯罪人引渡し条約は結んでいないということなので一安心ですね。

でも、この38条はどこにいても日本人にも適用されることになるので、もう香港には遊びに行けないですね(汗)。中国の悪口、習近平の悪口をつい言ってしまった日本人もたくさんいると思いますが、どうやらそれも犯罪になりそうです。香港にこれまで同様遊びに行ったら、空港やホテルで捕まってしまって、中国本土に引き渡されて…ということにならないとも限りません。あの蟹はもう食べられないのか?!(涙)

考えてみると、中国との間に犯罪人引き渡し条約がを結んでいる韓国やイタリア、フランスなどにも行けない可能性も出てくるかもしれません。そこで、中国からのリクエストがあれば中国に引き渡されることになりますから。まったくとんでもない域外適用法です。

杉田 勝