コラム

日本の年金基金の出来はまずまずかな?

杉田勝です。

新型コロナの猛威で株価が2月から3月にかけて暴落しました。

それで気になるのが我々の支払っている年金の運用成績です。
世界最大の年金基金である日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は5年に一回見直していますが、現在は次のようなポートフォリオで投資しています。
国内債券25%、国内株式25%、外国債券25%、外国株式25%です。

2月から3月の世界的な株価の大暴落でGPIFも巨額な損失を出した模様です。ブルームバーグのデータによると1-3月期は次のような結果になりました。

1-3月期の運用収益率
運用資産全体 ▲10.71% 過去最悪
 国内債券 ▲0.51%
 国内株式 ▲17.63%
 外国債券  0.50%
 外国株式 ▲21.88% 運用損失額は過去最悪
19年度通期の運用業績は8兆2831億円の損失を計上。第4四半期の影響が通期全体の運用成績に響いた。

2019年度では、19年4~12月が9兆4241億円の黒字であったので、年間トータルでは8兆6000億円の赤字ということのようです。GPIFの資産総額は2018年度末では159兆円であったので、2019年度は5.4%の損失ということになります。GPIFは運用開始からかなり儲けている優秀なファンドです。過去19年間で累積収益は57兆5377億円ですからざっくり言っても50%の利益を出しているからです。もっとも複利計算すると年利2%程度ですが...

1-3月期と同様に、ブルームバーグによると、2019年度の運用収益率と資産残高については下記のようになっています。
運用資産全体 ▲5.20%
 国内債券 ▲0.36%
 国内株式 ▲9.71%
 外国債券  3.55% 大幅な金利低下で債券評価額が上昇
 外国株式 ▲13.08%
3月末の運用資産額 150兆6332億円
自主運用を始めた2001年度からの累積収益 57兆5377億円

2019年度のマイナスは、1-3月期の株価の世界的な暴落を考えると、予想通りという感じですね。ただ、外債は暴騰していたはずなので、外債の利益が小さかったのは気になります。せっかく外債枠があったのにヘッジが効いていなかったように思うからです。
いずれにせよ3月下旬から株は戻っているので4-6月は国内、海外株式とも取り戻せているはずです。

ところで、GPIFの外債投資枠は25%ですが、まだその枠を使い切っていません。3月末時点の運用資産のうち、外債は22.2%だったので、4月からの目安を3%弱下回り、目安まで4兆~5兆円ほどの買い余地がまだあると思われます。また外債25%という数値にはバッファーがあって上下6%の幅を認められていますので、上限まで投資するとすれば13兆円もの買い余地があるわけなので、それを始めた場合為替市場では円安方向に働くのは必至です。円を売って外貨を買う取引が発生するからです。2-3円は簡単に動くかもしれません。

問題は彼らがそれをいつやるかです。ちょっと難しい話になりますが、主要先進国が金利を大幅に引き下げ、足元の債券運用は厳しい状況なので、GPIFが外債投資を増やすタイミングとして考えられるのは米国の長期金利が上がり始める時でしょう。つまり、国債が売られているときです。現在は長期金利は下がってきていますから、多分長期運用者のGPIFは逆張りするはずなので、今すぐはそのタイミングではないでしょう。米国の長期金利が上がってきてからと思います。

杉田 勝